――新作の映画『罪の声』では、幼い娘を持つお母さんであり、思い悩む夫を見守る、そんな女性の役を演じていらっしゃいました。, 撮影は去年の春、1年半くらい前だったんですが、私の娘を演じた子役の朝日湖子ちゃんが、とてもかわいらしい子で! しかもすぐに仲良くなってくれて…。現場では、星野源さんが演じる旦那さんと3人で、とにかく良い家族になれるようにと思っていたのを覚えています。, ん~…、あの、すごく覚えていることが1つありまして。動物園での撮影で、撮影場所の移動をするとき、土井(裕泰)監督と、荒井由実さんの歌をずーっと歌ってたんです、夕日の時間。そしたらそこに星野さんも加わってきて、なぜか3人で、動物園で荒井由実さんを熱唱するっていう(笑)。あれはいい時間で、とても楽しかった。なかなかないです、現場で監督と一緒に歌を歌うなんて。, そう、基本重いです。現場の雰囲気もなかなか重かった(笑)。でも動物園のシーンはその中でも比較的楽しい要素があったので、みなさん、一服の清涼剤的な気持ちもあったのかもしれません。, 台本をいただいて、読んで、私なりに役柄のことを想像していくのですが、同じ台本でも、人それぞれ受け取り方って違いますよね。監督が思った曽根亜美、旦那さん役の星野源さんが思った曽根亜美がある。なので、最終的には現場でもらうヒントがすごく重要だと思っています。相手役の星野さんの目に浮かんでいるものや、子役の子の甘え方、監督の言葉など…。そういったものを受け取って、少しずつ役を掴んでいく感じでした。たぶん同じ脚本でも、相手役の方が別の俳優さんだったら、あるいは撮影の日の天候が違ったら、また別の像が生まれる。その感じが、私にとってはすごくおもしろいし、人とものづくりをする醍醐味は、まさにそういうことなのでは、と思います。, ――脚本を手がけられたのが、野木亜紀子さん。以前ドラマ『アンナチュラル』で、野木作品に出演されていますね。, そのあと、『コタキ兄弟と四苦八苦』というドラマにも出させていただいているので、野木さんの作品は3作目なんです。, ――野木さんは今最も注目されている脚本家の一人ですが、演じる側から、野木脚本の魅力とは?, 今回の映画の冒頭で、小栗旬さんが演じる新聞記者のセリフで、「犯人グループは一円も手にしていない。まして、誰かが死んだわけでもない。今さら掘り返す価値あります?」というものがあって。しかし、その事件のせいで、人生を狂わされた人がいたり、被害にあった人がいる、それを描いているのがこの映画です。きっと現実にも、一見何も起こっていないように見える事件でも、影響を受けたり、トラウマを抱えてしまった人がたくさんいて、世の中にはそういった“声になっていない人の声”が実は溢れている。私が出ていない作品も含めてですが、野木さんの脚本は、その声を決してないがしろにしない、誰のことも犠牲にしない印象があります。ドラマや映画は時間に限りがあるから、どうしても描けないもの、置いていかれてしまうものがありますが、野木さんが描きたいのは、むしろそういうところなのかな、とも…。昨日、「明日取材だ、何を話そう…」と考えていたとき、ふと、春先の自粛期間に『コタキ兄弟~』を観て、作品の素晴らしさに感動したときのことを思い出し、他の作品のことも含めていろいろ考えていたんですが、野木さんの大切にされていることが少し見えたような気がしました。, そうですね。そこで何を言っていいのかわからないというか…(笑)。あ、でも、一度、野木さんのツイッターのボタンを押させていただいたことがあります。記者発表か何かでご一緒したときに、スマホをポチポチやってらして、「みんなの写真をツイッターにアップする」と。これを押すと世界に配信されるのか、と思ったら、なんかすごいボタンだな、と…。だって世界につながってるわけじゃないですか。不思議な気持ちになりながら、投稿のボタンをポチッと押させてもらいました。, あ、“お茶日記”つけてます。私、昔から中国茶が好きで飲んでいまして、いつ、何のお茶を飲んだかだけは書いてますね。情報の羅列。最初はノートにまとめてたんですが、ここ数年、現場の予定表みたいな紙の裏に書くようになっていて、それも含めてなんかおもしろくて。『アンナチュラル』の香盤表のうらに、“何月何日何時、阿里山茶”、みたいな。しまいにはパッケージを貼ったりして、さらに最近は仕事で体温を測るので、それも一緒にメモしたりして、「なんなんだろう、これ」って思いながらやってます(笑)。, いちかわ・みかこ 1978年6月13日生まれ、東京都出身。’94年、雑誌『オリーブ』の専属モデルとしてデビューし、’00年、長編映画で女優デビュー。代表作にドラマ『すいか』(’03)、『アンナチュラル』(’18)、『凪のお暇』(’19)。映画では『めがね』(’07)、『シン・ゴジラ』(’16)、『よこがお』(’19)など。現在ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)に出演中。ジャケット¥310,000 セーター¥130,000 ブラウス¥115,000 デニムパンツ¥72,000 ブーツ¥175,000(以上セリーヌ バイ エディ・スリマン/セリーヌジャパン TEL:03・5414・1401) ピアスはスタイリスト私物, 『罪の声』 35年前に起きた食品会社を標的とした脅迫事件。未解決のこの事件を、新聞記者・阿久津英士(小栗旬)は追いかけていた。一方テーラーを営む曽根俊也(星野源)は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に自分の声が入ったテープを見つけ、知らぬ間に事件に関わっていたことを知る。10月30日公開。, ※『anan』2020年11月4日号より。写真・東 京佑 スタイリスト・谷崎 彩 ヘア&メイク・草場妙子. 星野源「うちで踊ろう」が大成功したワケ dommune・宇川直宏が分析! 星野源(ほしのげん)の公式サイト. ――DOMMUNEは、昨年秋に、渋谷パルコ9階のクリエイティブスタジオに移転し、「SUPER DOMMUNE」として進化。新たな文化の発信拠点を築いていこうと思った矢先に、自粛要請があり、すぐさま無観客でのライブストリーミングに切り替え、さまざまな活動を行っていますよね?, 2月末、政府から大人数が集まるイベントの自粛要請があり、PerfumeとEXILEは当日のドーム公演を中止し、ライブ業界に激震が走りました。そんな中、3月1日に横浜アリーナでライブを行う予定だったBAD HOPが、コロナ禍において初めて無観客でのライブ配信を決め、投げ銭システムやクラウドファンディングを導入。これをきっかけに、日本のエンタメはオンラインの世界を求める動きが加速したように感じます。その直後、DOMMUNEは営業自粛を行うライブハウス、ナイトクラブなど文化施設に対する助成金を求める「Save Our Space」の記者会見を行いました。また小規模映画館支援のためのクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」立ち上げの記者会見は、DOMMUNEのスタジオで、無観客、無出演者、無記者で行ったんです。スタッフ以外、会場は無人で、各出演者をオンラインでつないでモニター越しに会見したのですが、従来の記者会見の様子を彷彿とさせるために、ソーシャルディスタンスの目安となる2m置きに水入りのペットボトルを置いて、人の気配を感じられる配慮も斬新な試みと絶賛され、3億円以上のクラウドファンディングが集まりました。この新しい記者会見のスタイルは、民放各局でも取り上げられ、さまざまな業界に大きな影響を与え、まさに世界がDOMMUNE化! ここまで注目されるようになったのは、我々が開局以来10年にわたって培ったノウハウを生かし、いち早く世の情勢に対応できたからこそだと思っています。, ――今回のコロナ禍で、世界中のアーティストたちが無観客ライブをオンラインで有料配信する動きがさかんになり、演劇人たちがZoomなどを利用して完全リモートで芝居やドラマを作成する動きが進みました。ライブストリーミングやオンライン配信は、新たな視覚表現の定型として、今後もエンタメ業界になくてはならないものですよね?, そうですね。さまざまな動画配信プラットフォームの勢いが加速し、メディアのヒエラルキーが完璧に崩れ始め、個の発信力や影響力が一層大きくなってきています。その代表ともいえる動きが、レディー・ガガが発起人となって世界中に呼び掛けた、医療従事者を支援するためのテレワークチャリティライブ。世界中の音楽ファンを魅了し、集めた資金はなんと約1億2800万ドル(約137憶円)! これこそ究極のエンターテインメントだと思いました。またZoomの爆発的な普及もエンタメ業界を大きく変えた要因です。フルリモート劇団「劇団ノーミーツ」が旗揚げしたり、上田慎一郎監督は短編映画『カメラを止めるな! リモート大作戦!』をZoomで製作。さらに、テレビのワイドショーやドラマまでもが、ソーシャルディスタンシングを意識して出演はリモート化し、Zoomを模したレイアウトで番組が制作され始めました。エンタメにとどまらず、これまでに対面で行ってきたミーティングやセミナー、飲み会、婚活、デートなどもクラウドミーティングで行われるようになり、何もかもスプリットスクリーン上に集約され、全ての表現がフラットになってしまいました。そこで改めて、今までは当たり前だった“人に会う”という行為の真の意味について考え始めた人も多いと思います。, ――たしかにZoomを活用すれば時間や労力の節約にはなるけれど、直接コミュニケーションをとった感覚は得られませんよね?, 会話はできても、会合はできないと思うでしょ? しかし、その一方で場所性を体感できるような実験も行われています。たとえばエンジニア集団の「ライゾマティクス」が行ったストリーミングパーティでは、現実のクラブ空間と同じように、オーディエンスのアバターに自分のアバターを近づけると相手と会話ができるようになり、逆に離れると相手の声は聞こえなくなるんです。会場に流れる音楽も同様で、DJブースとの距離を聴覚的体感に置き換え、リアル体験に近いオンラインコミュニケーション環境を作り込んだんです。僕が先日、アバターとして参加した「バーチャル渋谷」のオープニングイベントでの体験も新感覚でした。若槻千夏さん、SEKAI NO OWARIのDJ LOVEさん、バーチャルライバーのアンジュ・カトリーナさんとともに参加して、渋谷の街並みを完全に再現したVR空間を4人で散策したんです。もちろんみなさんと直接会ってはいないのですが、VRコントローラーを装着して、体を動かしながら自分のアバターを操作して会話することで、リアルにみんなで渋谷を歩いている感覚が得られたんです。これはそれぞれが渋谷に持つノスタルジアが発動し、人が発するエネルギー「アウラ(オーラ)」を感じて、共有性が深まったからだと、僕は思っています。まさに実世界を超えたところにある別世界。バーチャルやオンライン上の世界でも、場所や時間軸、はたまたノスタルジアなど、何かを共有することで、会ったり、一緒に体験したりという感覚が得られるんです。これは自粛要請中に話題になった星野源さんが作詞・作曲した「うちで踊ろう」のコラボ企画にも同じことがいえます。あれは、最初にインスタライブで投稿されたことがとても重要で、縦レイアウトで、1フレームの中でコラボレーションできる隙間を作ったことで、さまざまな人が音楽と映像をエディットしやすくなり、星野源さんと同じ空間の中にいるレイアウトが果たせたからこそ、プロジェクトは大成功したんだと思います。, うかわ・なおひろ 映像作家。1968年4月12日生まれ、香川県出身。DOMMUNE代表。グラフィックデザイナー、ミュージック・ビデオディレクター、VJ、文筆家、司会業など、多彩な顔を持つ。, 今回のコロナ禍で、音楽ライブや演劇などのイベントが中止に追い込まれ、エンタメ界は軒並み厳しい状況に直面。そんな中、急速にニーズが高まったのがライブストリーミングや動画配信サービス。今やYouTubeにとどまらず、インスタライブなど、SNSを利用して簡単に自己表現できるようになった。そのライブストリーミングの先駆け的存在ともいえるのが「DOMMUNE」。2010年、日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネルを個人で開局した、代表の宇川直宏さんに、コロナ禍における新しいエンタメの動きについて伺いました。, © 1945-2020 by Magazine House Co., Ltd. (Tokyo).